唐丹のことば 「旅の人」必読!
子どものころはよく聞いていたけれど、このままでは消えてしまいそうな唐丹のことばを集めてみました。ほかにもいろいろあるかと思います。教えていただけますと、うれしいです。(今回追加した言葉は太字になっています)
2020年7月2日更新 by Chiba
ことば | ことばの意味 | |
あ | あねっこ | 若い女性。また、商家などで下働きをする若い女性。 |
あべ | 行こう。ていねいな言い方が「あばいん」で、「行きましょう」。 | |
安徳天皇 | 働かない人に向かって、「この安徳天皇が!」などと使用。意味はご推量を。庶民には、雲上人の権威はよくわからない。 | |
あんべ | 具合。「あんべ、わる(い)」などと使う。おそらく塩梅(あんばい)から。 | |
あんや | お兄さん。花露辺の友人が使っていた。お姉さんは「あんね」。 | |
いじる | いじめる。 | |
うざね | 苦労する。難儀する。「うざねを吐く」といった使い方をする。動詞が「吐く」なのは、「うざね」の「ね」が「音(ね)」だからなのではないだろうか。 | |
うたて | いやな気持ち。 | |
うんだっこ | 熟柿。 | |
えんず | 違和感がある。きゅうくつである。イガイガする。「目がえんず」は、「目がごろごろする」。 | |
えんずくらし | 前述の「えんず」 + 「くらし」。少しえんずい。 | |
おかみ | 神棚のある居室(たぶん)。 | |
おがる | 育つ。 | |
おじゃんこ | お座りする。子どもに対して使う。 | |
おしょす | 恥ずかしい。謙譲の意の接頭語「お」+「しょす」。 | |
おだつ | ふざける。 | |
おづがい | お誘い。近所付き合いの基本であり、なんにせよ、お声かけしておいたほうがよい。 | |
おなごぶり | 女性の顔だち。容色。例文:おなごぶりがいい。 | |
おふるまい | 接頭語「お」 + 「振る舞い」(もてなし)。結婚や建前(たてまえ)など、めでたいときに行われる。「おふるめ」という人も。 | |
おらい | 私の家。我が家。「おら」+「家」。 | |
おらど | 我々。「おら」+「等(とう)」? | |
おらほ | 私のほう。我が地域。「おら」+「方(ほう)」。 | |
か | がおる | がっかりする。元気がなくなる。 |
かくし | ポケット。隠し。荒川の友人が使っていた。 | |
かこ | 船員。水夫(かこ)。 | |
かしき | 炊事。 | |
カゼ | ウニ。「ボウズカゼ」はバフンウニ。 | |
かせる | 食べさせる。 | |
かだごと | お返しをきっちりすること。「あら、かだごとだこと」などと使う。 | |
かつける | かこつける。 | |
かばねやみ | なまけ者。「かばね」はなきがら、「やみ」は病人だろう。身体を動かさず、さっぱり仕事をしないと、「この、かばねやみが!」などと言う。 | |
かま消し | 財産をなくすこと。事業に失敗すること。家に受け継がれてきた竈(かまど)の火を消してしまうことから。 | |
かもる | いじめる。 | |
切り上げ | 漁のシーズンが終わるときに、船主がかこ(前述)を慰労するために催す宴。かつて三陸沖がスルメイカの良い漁場で、それを人力で釣り上げていたころは盛大に行われていた。 | |
けっちゃ | 裏返し。「けっちゃに着る」。 | |
けな | 腕。古語の腕(かいな)からきているのでは。 | |
ける | あげる。やる。くれる。「嫁にける」は、嫁にやる。 | |
こえ | 疲れる。「こえかった」で、「疲れた」。なまらない言い方だと「こわい」。 | |
ござりす | ございます。会合や訪問時によく聞かれた丁寧語。 | |
ごすたん | 後ろへ下がること。操船用語の「Go astern」(後進)より。 | |
ごせやぐ | 怒る。腹を立てる。「ごしぇやぐ」と言う人もいるかな。 | |
ごろっぺ | 最後尾。徒競走のごろっぺはつらい。 | |
こわい | 疲れる。「こえ」を参照。 | |
ごんぼ掘り | 泣きわめくこと。また泣きわめいて、まわりを困らせる人。 | |
さ | 様なもの | 「さまなもの」と読む。変わったもの。「様」は異様のこと。「さまなかっこ(服装)して」などと使うことも。 |
さんみ | 寒い。「さんみね」などと使う。暑いときは「あっつね」。 | |
し | 衆。「おなごし」(女性の方々)などと使う。 | |
しばで | 酒の肴。同級生によれば「すばで」という発音が正統らしい。 | |
しね | 硬い? 筆者(50代)は耳にしたことはあるが、使ったことはなく、うまく発音できない。教わりたい言葉の一つ。 | |
しゃっけ | 冷たい。「しゃっこい」が短くなっているのでしょう。 | |
しゃで | 舎弟。弟。 | |
しゅうり | ムール貝。 | |
しょす | 恥ずかしい。 | |
ぜぇごったろ | 田舎者。「在郷太郎」から? 「ぜぇごったろみたいなかっこして」などと使う。 | |
せつね |
①うるさい。②切ない。 | |
た |
たいし | ムダ。「金(かね)たいし」は金のムダ。「目(め)たいし」は目のムダ。目が疲れるだけで得るものがないときに使う。ネットサーフィンは、たいてい目たいし……。 |
たばこ |
①休憩。②休憩のときに食べるおやつ。「鍋焼き」(小麦粉に砂糖と塩少々を加え、水で溶いて焼いたもの。砂糖の量は小麦粉の半分くらい。フライパンで焼いても鍋焼きです)が、多かったかな。「鍋焼き」の試作を「写真集」に掲載しました。 |
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旅の人 | 他郷(気仙地方以外?)から移住してきた人。家庭をもち、子どもが生まれたら、「旅の人」と言われなくなるのかも。 | |
玉っこ | ビー玉。 | |
だんけ | だんな。旦那。 | |
ちかし | 親しい。 | |
ちょす | さわる。 | |
つづこむ | 詰め込む。 | |
出はる | 出かける。 | |
てびら | 小型のガ。 | |
とっけす | 取り返す。 | |
とべっこ | 少し。用例:「かぜ(ウニ)、なんぼとったの?」「なあに、とべっこだでば」。 | |
な |
なす | 産む。 |
なんでかんで | なんでもかんでも。なにやら。 | |
ね | ない。たとえば、「要らない」は「要る」+「ない」だから、「要らね」。「知らない」は「知る」+「ない」だから、「知らね」。 | |
ねぷて | 眠い。 | |
ねまる | 座る。古語辞典に同じ意味で出ている。 | |
は | ばった |
めんこ。 |
ばっちっこ | 末(すえ)っ子。「末子」(まっし)に「子」を付けた? | |
浜迎い | 漁から帰った船を迎えに出ること。夫を迎えに出る奥様方は華やいでいた気がする。大漁なら、なおのこと。 | |
はまる | 参加する。仲間になる。 | |
ばんじょ | 魚介や海草などを入れる大きなカゴ。ちなみに2014年、唐丹漁協では、ウニ解禁日1回につき、1そう当たりバンジョ1つに漁獲制限していたようだ。 | |
ひざかぶ | 膝小僧。 | |
ひまだれ | 効果のないことに時間を費やすこと。たとえば…、ダイエット!! | |
ふくべ | ひょうたん。「青ふくべに屁をひっかけたような顔」は、青白く、顔色がわるいこと。 | |
ぶじょほ | 不義理。例文:ぶじょほして申し訳ねす。 | |
ふらいき | 大漁旗。「富来旗」と漢字をあてるらしいが、英語のflag(旗)から来たような気がしている。船をはぐ(造る)ときに、親戚や取引先が贈る習慣がある。 | |
ぺし | 「……しよう」。決意の助動詞「べし」の転か。有名な「がんばっぺ」の「ぺ」は、この省略形。「がんばっぺし」のほうが丁寧。 | |
ほいど | こじき。乞食。 | |
ぼっけ | 認知に難のあること。「惚ける」の転か。「ばがぼっけ」といったように、「馬鹿」と対で使われることが多い。 | |
ほまち | 臨時の収入。帆待ち。 | |
ま | まき | 家の系統。ふつうは「……まき」と、屋号の後ろにつけて使う。 |
まっきる | 興奮して怒ること。 | |
まで | ていねい。 | |
まなぐ | 目(まなこ)。 | |
まびとくされ | 「まびと」は柳田国男で有名な「客人(まれびと)」であろう。客のように仕事をしない、怠け者のこと。 | |
まぶる | 見守る。「火をまぶる」などと使う。 | |
めぐさい | みにくい。「めんこい」の対義語。「みぐさい」ともいう。 | |
めぐせ | 「めぐさい」と同じ。「みぐせ」ともいう。唐丹弁では、「さい」→「せ」となる。 | |
めづら | 目のかたきにする。 | |
めんこ | かわいい子。いとしい子。古語の「愛(め)ぐし」+「子」か。「ばばさまのめんこ」は、おばあさんがとても可愛がっている子。 | |
もうし | おそらくは「申し」。店に入るときに言う、呼び掛けの言葉。「ごめんください」か。 | |
や | やせうま | 背中に荷物を固定して運ぶための道具。この倍ほど長いものを歩荷(ぼっか)が荷物を背負うときに使っている。とくに肥え樽を運ぶときに活躍。 |
やせね | やるせない。発音するときは、最初の音「や」にアクセントを置く。 | |
やばっつ | 汚い。 | |
やまっこ | 山っ子。浜仕事のできない人。「海っ子」という言い方はない。 | |
やんた | いやだ。 | |
ゆるぐね | つらい。「ゆるくはない」ということなんでしょうね。「からださ、ゆるぐねくて」(体がつらくて)。 | |
ゆんべ | いい具合。「ゆんべにびんせん(便船? 便乗させてもらうこと )もらって」などと使う。 | |
用足し | 用事。例文:「○○さん、いねの?」「用足しさ、行ってるでば」。 | |
よめこと | 悪態。世迷い言? | |
ら | らいん | 「……ください」。依頼の丁寧な表現。動詞のあとに続けて使う。「けらいん」は、「ください」。「行ってください」は、「行かいん」。では練習問題。「してください」は? |
わ | わっぱか | 雑な。「おらど(自分たち)のは、わっぱか仕事だもの」などと使う。 |
ん | んだごった | そうだと思う。「んだ」(そうです) + 「ごった」(と思う、推量する)。 |